複雑系科学専攻 宮崎翔太
博士課程でのご自身の研究テーマ
私の研究分野は人工生命と呼ばれ,生命の振る舞いを人工的なシステムを通して理解することを目指しています.そのための道具として,生物進化のプロセス(選択・変異)から着想を得た手法である進化計算を用います.計算機の中で個体同士の生存競争を行い,適応的な個体が次の世代へと受け継がれる過程を繰り返すことで,進化を表現します.個体がどの程度適応的であるかは適応度と呼ばれ,それを計算するための式(適応度関数)によって決定します.人間の好みのように,適応度関数で表すことが難しい主観的な概念も存在します.こうした概念を進化の過程に取り入れるために,人間が選択を行う手法(対話型進化計算)が提案されてきました.私の研究では,この主観的な評価を人の代わりに大規模言語モデル(LLM)が行うことによる,新しい進化計算の可能性を探っています.現在はバーチャル空間を動く,柔らかな体を持つロボット(以下,仮想生物)を進化の対象として,より「可愛らしく」動く仮想生物をLLMに選択させて進化する実験を行い,その進化の方向性がどのようなものであるかを調べています.
博士課程に進学しようと決めた時期および動機等
修士2年生になる直前に博士課程に進学することを決めました.それまでは就職活動の一環として企業のインターンや説明会に参加していました.いわゆる冬のインターンの時期で,就職するのか進学するのか悩みながら日々を過ごしていました.そんな折,高校生向けに自分の研究分野を紹介する機会がありました.そこでは高校生に仮想生物の形を設計してもらい,その動き方を遺伝的アルゴリズムで進化させる体験型企画を行いました.説明資料を作る過程で自分の研究分野について更に理解が深まり,人工生命は面白い・奥深い研究分野であると改めて感じました.これがきっかけの一つとなって修士課程の後も研究を続けたいという気持ちになり,進学することを決意しました.
博士課程において、楽しいところ・大変なところ
学会に参加して他の研究者の発表を聞いたり,自分の発表に対する意見を聞いたりすることが楽しいです.他の研究者の意見には新しい視点も多く含まれ,大変参考になります.また,そうした議論や発表を通じて新たな研究のアイデアを得られることもあります.大変なところは,これまで以上に自己管理力が求められる点です.研究の方向性や日々の目標を自身で決定して進める必要があります.自身の研究やその他の仕事を進めていく過程で,自分が博士課程の学生として相応しい姿であるか自問自答しながら,至らない部分も多々あると自覚して悔しい気持ちになることもあります.
これからのキャリアや夢
現時点では具体的なキャリアの計画はありませんが,研究活動を通して得られた知見を社会に役立てたいという気持ちがあります.私は研究活動の一環として,一般向けの科学イベントへの出展活動にも取り組んでいます.そこではAIと人の未来をテーマとして,参加者が描いた絵を人間ではなくAIが批評し,その内容を読んで人間とAIの違いについて来場者に考えてもらう企画などを行っています.来場者との対話を通して,ChatGPTをはじめとしたAIツールは既に人々の間で日常的な存在となっていることを肌で感じました.AIを一人の人格として日常的な相談をしている人もいます.とてもぼんやりとしてしまうのですが,これから人とAIが互いにうまく付き合っていくために,人とAI,またAI同士の相互作用に関する理解が重要であると考えています.研究活動を通して何か知見が得られたときには,それをイベント活動に反映させて社会に役立てたいです.
後輩たちに対するメッセージ
博士後期課程に進学を考えている後輩学生に向けてのメッセージということでしたので,これから先の進路について悩んでいる方に向けて書こうと思います.就職活動に追われていると,どうしても周りの雰囲気に流されてしまいがちですが,まずは自分の素直な気持ちと向き合うことが大切だと思います.自分の気持ちに対して理解が深まれば,進路の選択を納得して行えるようになると思います.また,悩んでいる感情を言語化してみることもおすすめです.書き出すことで自分の考えが整理されるので,次の一歩が見えてくることがあります.

