社会情報学専攻 辺 明秀
博士課程でのご自身の研究テーマ
近年、訪日観光客の増加に伴い、一部の観光地では混雑や交通問題、住民や観光スタッフの負担増加といった「オーバーツーリズム」が深刻な課題となっています。私の研究では、こうした問題に対して、観光地で収集される地域情報とAI技術を活用し、観光の実態を客観的に把握しながら、地域の負担軽減につながる支援手法を検討しています。
具体的には、駐車場に設置したカメラによる車両・車牌識別を用いて、観光客の流入や滞在傾向を把握し、時間帯や季節ごとの混雑状況を定量的に分析しています。これにより、これまで感覚的に語られてきた「混んでいる時間帯」や「忙しい時期」をデータとして可視化することが可能になります。また、スマートフォンで利用できる多言語音声ガイドシステムの開発や、観光情報を整理したマップの制作を通じて、現地スタッフによる案内や説明の負担を軽減することも目指しています。これらの取り組みを通して、観光地の現場で実際に活用できるデータや仕組みを提供し、観光客と地域の双方にとって持続可能な観光の実現に貢献したいと考えています。
博士課程に進学しようと決めた時期および動機等
博士課程への進学を決めたのは、修士課程修了後に国際学術雑誌の出版社で働いた経験がきっかけです。世界中の研究者による論文に日々触れる中で、研究が社会や現場に与える影響の大きさを改めて実感しました。同時に、「自分自身も、現実の社会課題と向き合いながら、研究を通じて継続的に価値を生み出したい」という思いが強くなりました。これまでに培ってきた技術的な知識を基盤としつつ、それを実際の現場や社会と結び付けて活用する研究に取り組みたいと考え、博士課程への進学を決意しました。
博士課程において、楽しいところ・大変なところ
博士課程で楽しいと感じるのは、研究を通じて観光地の職員や現場スタッフの方々と協力しながら、多くの人と関わって仕事ができる点です。日々の業務で忙しい中でも研究に協力してくださる皆様から現場の知見を教えていただくこと自体が、大きな学びになっています。自分の研究によって観光客の体験が少しでも向上したり、現場の負担が軽くなったと評価していただけたときには、研究者として大きなやりがいを感じます。一方で、研究・実装・調査を自ら計画し、研究と生活のバランスを取りながら継続して進める必要がある点は大変ですが、その分、自律性や粘り強さが養われていると感じています。
これからのキャリアや夢
今後は、研究で培ったAI技術やデータ分析の知識を活かし、観光分野に限らず、地域社会が抱えるさまざまな課題の解決に貢献したいと考えています。特に、現場の声を大切にしながら、技術と人をつなぐ役割を果たせる研究者・実践者になることが目標です。将来的には、大学や研究機関だけでなく、自治体や企業とも連携し、多くの人の生活を少しずつ良くする仕組みを社会に実装していきたいと思っています。
後輩たちに対するメッセージ
博士課程は決して楽な道ではありませんが、「自分が本当に面白いと思えること」「長く続けたいと思えるテーマ」を見つけることが何より大切だと思います。迷ったり不安になったりすることもあると思いますが、周囲の人に相談しながら一歩ずつ進めば、必ず自分なりの答えが見えてきます。研究はすぐに結果が出なくても、積み重ねた経験は必ず力になります。自分を信じて、ぜひ挑戦してみてください。

