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  2. 心理・認知科学専攻

心理・認知科学専攻 久田朱音

博士課程でのご自身の研究テーマ

心拍が拍動している感覚や、胃が収縮しているような感覚、汗をかいているような感覚など、自己の身体内部の生理状態に関する感覚システムは「内受容感覚(Interoception)」と呼ばれます。私はその中でも特に心臓の拍動リズムに着目し、「拍動リズムを基にした運動と知覚の調節メカニズム」の解明を目的として研究を進めています。
修士課程では、成人を対象に、拍動リズムと運動・知覚の指標として眼球運動を用い、それぞれの発生タイミングの関連について検討しました。その結果、心臓が拍動した直後の収縮期には、外界を探索するための眼球運動であるサッケード(saccade)が生じやすく、続く拡張期には、探索によって得られた感覚情報を知覚処理するための眼球運動である固視(fixation)が生じやすいことが明らかになりました。このような「収縮期―探索運動、拡張期―知覚処理」という拍動リズムと眼球運動の発生タイミングの対応関係(以下、カップリング現象)は、脳内における自己身体内部情報に基づいた能動的な調節メカニズムの存在を反映していると考えられます。
博士課程では、このカップリング現象およびそのメカニズムが、ヒトの発達過程において、いつ・どのように・何を契機として獲得されていくのかに着目し、乳幼児を対象とした研究を行っています。さらに、より詳細なメカニズムの解明を目指し、脳波測定を組み合わせた研究を予定しているほか、「運動と知覚」というより広い視点から、リーチング運動と身体内部状態との関連の検討や、パフォーマンスへの介入研究など、複数のアプローチを用いて研究を進めています。

博士課程に進学しようと決めた時期および動機等

修士課程に進学した時から、研究者に対して漠然とした憧れを抱いていたので、博士課程への進学を前向きに考えていました。一方で、修士研究を進める中で、もし研究活動が自分に合わないと感じた場合には、その時に就職を考えようという楽観的な気持ちも持っていました。
実際に研究を始めてみると、計画を立て、実験課題を作成・実施し、データを解析して結果をまとめ、議論を通じて次の実験の着想を得るという一連の過程は、難しさや大変さはあるものの、想像していた以上に楽しく、面白く感じられました。これはもっと続けるべきだなと思ったので、博士課程への進学を選択しました。

博士課程において、楽しいところ・大変なところ

実験課題や解析のスクリプトを書いている時や、点と点だった知識につながりを見いだせた時、研究アイデアを考え、議論する時に、うれしさや楽しさを感じます。
一方で、学位取得に向けて自身の研究をある程度計画的に進める必要がある中で、それに加えて、TA業務や研究助成に関する情報収集および申請書の作成、将来のポストに関する情報収集など、さまざまな周辺業務を並行して進める必要があります。マルチタスクであるがゆえに、常に薄っすらとしたプレッシャーや焦りを感じることがあり、計画通りに物事を進められなかった時や、目指すクオリティに達しなかった時には、自身の能力不足を痛感し、悔しさや落ち込みを感じます。

これからのキャリアや夢

今のところ、アカデミアに残り研究者を目指したいと考えています。…と言いつつ、今後迎える可能性のあるライフイベントと研究生活とのバランスや、自身の研究者としての能力を考えて、大きな不安や迷いを感じることもあります。この文章を書いている現在も、論文がなかなかacceptされなかったり、他者と自分を比較して勝手に気持ちが落ち込んだりして、自分にはアカデミアで生き残る力がないのではないかと思ったりしています。
ですが、私の性格上、どんな選択をしても迷いや不安は生じます。であれば、自身が楽しく、面白いと感じている気持ちを大切に、自身の努力と運を信じて(笑)、本当にやりたい進路を選びたいと考えています。就職についても、職種を選ばなければ比較的いつでも選択可能な道であると捉えており、将来についてあまりシリアスに考えすぎないことも大切なのかもしれないと今は感じています。

後輩たちに対するメッセージ

ここまで色々書きましたが、抽象的で分かりづらい部分があればすみません(中学生の頃からポエマー気質なのです)。内容については、あくまで一つの個人的な経験として、それぞれご自身にとってポジティブに感じた部分だけを受け取ってもらえたら幸いです。
ただ、ここに掲載されている方々の文章を読んで、自分とは違うと落ち込んだり、どれにも当てはまらないからと進学を諦めたりする必要はないと思います。もし研究が好きで、面白くて、ちょっとやってみようかなと感じられるのであれば、博士課程への進学という選択肢を考えてみてもよいのではないでしょうか。金銭面を心配する声もありますが、学振やMNS、その他の外部の支援制度など、さまざまな制度が存在しており、探してみれば何らかの道が見つかる可能性は十分にあります。
どんな時でも(なるべく)物事の良い面に目を向ける努力をし、あまり気負いすぎず、楽しむ気持ちを大切にすることが重要なのだと思います。これを読んだ皆さまが、ご自身にとって良き未来を選択できることを願っています。

2026年2月16日心理・認知科学専攻特集:博士課程のリアル

Posted by tamatebako-editor-si

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