知能システム学専攻 NGUYEN Trung Thanh
博士課程でのご自身の研究テーマ
博士課程での研究テーマは,「どのような環境でも人の行動を正しく理解できるAIをつくること」である.人が暮らす現実の空間には,明るさの変化,カメラの位置の違い,人の動きのばらつきなど,AIにとって困難な条件が数多く存在する.例えば,カメラが遠く離れた場所にあったり,視野が部分的にしか重なっていなかったりすると,ある行動がはっきり映らないことがある.また,新しい行動が突然現れることもあり,AIが事前にすべての行動を学習しておくことは不可能である.このように,実際の環境は予測しにくく,従来の研究が前提としていた『整った映像だけ』では対応できない.そこでは,複数のカメラ映像や音などの情報を組み合わせ,映像が不完全であってもその時間的な流れを手がかりに行動を理解できるAIの仕組みを研究している.また,AIが見たことのない行動でも,テキストの説明を使って意味を推測できるようにすることで,未知の行動にも対応できる柔軟な仕組みづくりにも取り組んでいる.最終的には,見守り支援や安全対策,スポーツ分析,介護やロボットとの協働など,日常生活のさまざまな場面で役立つ「現実に強い行動理解AI」を実現することを目指している.
博士課程に進学しようと決めた時期および動機等
博士課程へ進学しようと決めたのは,修士課程の研究を進める中で,AIが実世界の環境で人の行動を正確に理解することの難しさと,その課題に取り組む意義の大きさを強く感じた時期だった.研究を重ねるほど,現実の映像やデータには,欠損・雑音・視点の違いなど多くの問題が存在し,それらを乗り越えるにはより深い探究が必要だと実感した.また,自分が取り組んでいる行動理解の研究は,見守り支援,介護,ロボット協働,安心安全の確保といった社会的に重要な領域に直結しており,その発展に貢献したいという思いが強まった.こうした課題に自ら向き合い,新しい技術を創り出せる研究者として成長したいと考え,博士課程進学を決意した.
博士課程において、楽しいところ・大変なところ
博士課程の楽しいところは,自分の好きな研究を深く追究できるだけでなく,国際会議や大規模な学会に参加して,多くの研究者と交流できることである.世界中の人と意見を交わしたり,自分の研究を発表して反応をもらえたりする経験は大きな刺激になり,新しい視点や協力のきっかけにもつながる.一方で大変なところも多く,特に研究費の申請書を書くことは,限られた時間の中で内容を整理し,説得力のある文章にまとめる必要があり,とても難しい作業である.また,実験や論文執筆が思うように進まないこともあり,計画性や粘り強さが常に求められる.それでも,一つ一つ成果が積み重なっていく過程は大きな喜びであり,研究者として成長を実感できる貴重な時間だと感じている.
これからのキャリアや夢
これからのキャリアとして,私は研究者として社会に貢献できる道を歩みたいと考えている.博士課程で培った経験をさらに深めるため,まずはポストドクとして国際的な研究環境で新しい知識や技術を身につけ,研究能力を高めたいと思っている.その後は,大学や研究機関で自分の研究テーマを継続的に発展させ,行動理解やAI分野の発展に貢献できる立場を目指す.また,研究活動だけでなく,学生や若手研究者の育成にも力を入れ,次世代が安心して挑戦できる研究環境づくりにも関わりたいと考えている.最終的には,研究成果を社会へ還元し,人々の生活をより安全で豊かにする技術を生み出せる研究者として成長することが私の夢である.
後輩たちに対するメッセージ

研究に取り組む後輩たちへ伝えたいのは,まず『好奇心を大切にしてほしい』ということである.研究は思いどおりに進まないことも多く,失敗や迷いが必ず訪れるが,そこで諦めずに「なぜこうなるのか?」と考え続ける姿勢が大きな成長につながる.また,一人で抱え込まず,指導教員や仲間と相談しながら進めることで,新しい視点や解決のヒントが生まれる.ぜひ学会や勉強会にも積極的に参加し,国内外の研究者と交流してみてください.そこから得られる刺激や出会いは,皆さんの世界を大きく広げてくれるはずである.そして,自分のペースで一歩ずつ前に進んでください.小さな成果の積み重ねが,自信と力になり,やがて大きな成果へとつながる.挑戦を続ける皆さんを心から応援している.

