【プレスリリース】心理学とAI言語モデルで『武士道』を読み解く~なぜ日本の名著は西洋人の心をつかんだのか?~

【ポイント】

・新渡戸稲造の『武士道』を、心理学と自然言語処理を組み合わせた手法により解析し、同書が複数の道徳次元にまたがる体系的な構造をもつことを明らかにした。
・『武士道』に近い道徳的構造をもつ日本文化関連文献ほど、英語版の刊行数や欧米言語への翻訳数などに基づく「西洋受容指標」が高い傾向にあることを示した。
・『武士道』の7つの徳目を分析した結果、「名誉」が道徳的構造上、中心的な位置を占めることを示した。

名古屋大学大学院情報学研究科の高野 了太 講師、唐沢 穣 特任教授の研究グループは、新渡戸稲造の古典的著作『武士道』を心理学と自然言語処理を組み合わせた手法により解析し、同書に表現された道徳的価値観が、複数の道徳次元にまたがる体系的な構造をもつことを明らかにしました。また、その構造が、西洋での受容の程度と関連していることを示しました。

本研究では、テキストに表れた心理学的特徴を定量化する自然言語処理手法を用いて、『武士道』に表現されている道徳的特徴を、キリスト教関連・聖書関連・日本文化関連の文献と比較しました。その結果、『武士道』は、権威への敬意や他者の擁護など、多面的な道徳的特徴をもつことが明らかになりました。

さらに、日本文化関連文献を対象として、英語版の刊行数や欧米言語への翻訳数などに基づく「西洋受容指標」を作成し、『武士道』との道徳的構造の類似性との関係を検討しました。その結果、『武士道』に近い道徳的構造をもつ文献ほど、西洋でより広く受容されている傾向が示されました。加えて、『武士道』の7つの徳目である「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」を分析したところ、「名誉」が複数の道徳次元をまたぐ中心的な概念として位置づけられることが明らかになりました。

本成果は、古典に残された言葉を自然言語処理で読み解くことで、文化や価値観が国境を越えて受容されるプロセスの解明につながる、新しい人文・社会科学研究の可能性を示すものです。本研究成果は、2026年9月17日付で、米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)がオックスフォード大学出版局から創刊した『PNAS Nexus』に掲載されました。

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【論文情報】

雑誌名:PNAS Nexus
論文タイトル:The seven virtues of Samurai : Revisiting a classic through computational language analysis
著者:Ryota Takano1 and Minoru Karasawa2
1.Graduate School of Informatics, Nagoya University
2.Future Value Creation Research Center, Nagoya University
DOI:10.1093/pnasnexus/pgag314

URL:https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag314

【研究代表者】

大学院情報学研究科 高野 了太 講師
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心理・認知科学専攻

Posted by tamatebako-editor-jimu