特集:高校生,あるいは高校生の心をもった人へのメッセージ
かれこれ45年前のこと.大学入学のガイダンスで手書き青刷り(当時よく使われたジアゾ式複写)の冊子が配られました.学科の先生方が書かれた新入生へのメッセージ集で,「教えてもらうのではなく,自分で学ぶということを身に着けてください」,「時間のあるときにしか読めない本をたくさん読んでください」ということが書かれていました.私事で恐縮ですが,私の父は寒村農家の出身で戦前の高等小学校を卒業した後すぐに就職し,苦労して私達子供二人を大学まで進学させてくれました.父は大変無口な人で,私が冊子を渡すと,それを読んで一言,「いいことが書いてあるじゃねぇか」とだけ返事がありました.「新入生にこんな冊子を作ってくれる学校なら,俺も安心した」と言いたかったのかもしれません.
この特集は,情報学研究科の6人の先生から,高校生,あるいは高校生の心をもった人へのメッセージ集です.まず私から「大学入学前にチャレンジすべきことは何ですか」 ,「スランプのとき,失敗したときはどのように対処されていますか」などの質問を投げかけて,それに答える形で文章を寄せて頂きました.それらは期待を越えた素晴らしいものばかりであり,編集担当の私自身が引き込まれて何度も読み返しました.また,その道を歩んできたからこそ書ける珠玉のフレーズを取り出して,文章全体のタイトルや小見出しとして使わせて頂きました.
この特集が,大学入学を目指して学んでおられる人達はもちろんのこと,「大学の教員というのはどんな人達なんだろう?研究が思い通りに進まないときは何をしているんだろう?」と思う方々へも,心に響く爽やかなメッセージを伝えてくれることを祈っています.最後になりましたが,教育や研究でお忙しい中,ご寄稿してくださった6人の先生方,ならびに,寄稿者の推薦,質問の作成から原稿の仕上げに至るまで多大な支援をしてくださり,その鋭い言語感覚で各記事のタイトルや小見出しを提案してくださった総務委員長 有田隆也先生に心から感謝いたします. (関 浩之)
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私の期待を遥かに超えた魅力的な特集がついに出来上がりました.ありがとうございました,お引き受けくださった6人の個性的な先生方,そして関先生.
世間では,えらく賢い受け答えができる人工知能が登場して,google検索の登場どころではないぞ,これこそ新たな産業革命だと騒ぎになっているようです(というか,すでに私もいろいろとお世話になっております)が,人工知能よ,お前にこういう文章が書けるのか,と問いたい.知性に満ちた文章の行間から,日々悩み続ける研究者としての生き様,息遣いが生々しく溢れ出ているではないか.
にしても,これほど多様な分野の人々が(情報という傘のもと)一つの部局に属して活躍しているって珍しいと思います.実際,多様な価値観の中にいるって何だか楽しいですよ.反知性主義なんてクソくらえってか.
高校生や受験生の皆さん,あるいは,何にでも興味が湧いてしまう瑞々しい心をお持ちのすべての皆さん,ごゆるりとお楽しみください. (有田 隆也)
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