教員紹介:永峰 康一郎(ながみね こういちろう)
研究内容
(1)吐く息から、体内でどのくらい脂肪が燃えているか?
みなさんはダイエットに興味がありますか?世の中にはダイエットの情報が氾濫していますが、「これをやれば誰でも簡単に必ずやせられる」という方法はまずなく、多くの人は途中で挫折します。なぜでしょうか?その一つの理由として、ダイエットを行っているときに「いま体内でどのくらい脂肪が燃えているのか」を実感できないことがあります。もし簡単に実感できれば、「そうか、30分やって100グラム脂肪が燃えたなら、あと30分やってもう100グラム燃やそう!」と、ダイエットのモチベーションが上がり、挫折しにくくなるはずです。 永峰研究室では、この目に見えない体内の脂肪燃焼を知るために吐く息(呼気)に注目しています。なぜ呼気でしょうか?体の中の状態を知るためによく行われるのが血液検査です。しかし血液検査は、痛い、何度もできない、医療従事者しかできない、というデメリットがあり、日常生活で簡単にはできません。これに対して呼気検査は、痛くない、何度でもできる、誰でもできる、というメリットがあります。 呼気の中にごくわずかにアセトンという化学物質が含まれています。アセトンは脂肪が燃えるときに肝臓ででき、できたアセトンは吐く息やおしっこと一緒に体外へ排出されます。簡単に言うと、体内で脂肪が燃えれば燃えるほど吐く息の中のアセトンの量が増えるのです。そこで研究室では被験者にさまざまな運動をさせて吐く息に含まれるアセトンを測定し、運動と吐く息のアセトンとの関係を調べています。
(2)どちらの地理情報がより分かりやすいか?
私たちの身の回りには様々な地理情報があります。これらを色々な観点から比較検討しています。
・環状線の方向表示(時計回り・反時計回りと外回り・内回り):名古屋の地下鉄名城線は時計回り・反時計回り、東京のJR山手線、大阪の大阪環状線は外回り・内回りを用いています。時計回り・反時計回りの方が万国共通で分かりやすいです。
・住所(街区方式と道路方式):日本では住所の末尾を、町・大字→街区・小字→番地と階層的に区切っていって、土地に番号を付ける街区方式となっています。これに対して欧米では住所の末尾を、地域の全ての道路に名前を付け、道路の起点から順番に、建物に番号を付ける道路方式が主流となっています。住所からある建物を探すには道路方式の方が分かりやすいのですが、この理由について地理学的・数理学的・認知科学的に検討しています。
・インターチェンジの番号(順序方式と距離方式):日本ではインターチェンジの番号を起点から順番に付ける順序方式となっていますが、アメリカでは起点からの距離を番号とする距離方式が主流です。一見とびとびの番号となる距離方式は分かりづらいように思いますが、インターチェンジを増設してもルールが崩れない、走行中に目的地までの距離や時間の目安が付けやすいなど、距離方式の方が合理的です。
・信号の右折矢印(青より後に出ると青より先に出る):日本では交差点の信号に右折の矢印がある場合、青(直進)より後に出る場合がほとんどですが、アメリカでは青より先に出る場合が主流です。どちらが右直事故(右折車と直進車の衝突事故)を減らせるか考えます。
(3)ドローンを用いて田んぼの収穫量を上げる
田んぼの収穫量は様々な要因により変化します。もちろん気温や降水量など直接コントロールできないものもありますが、田んぼの水の引き方によって田んぼの水温とその分布が変わり、それが全体の収穫量や実付きの分布に影響することが知られています。そこでサーマルセンサーを搭載したドローンを用いて上空から撮影した赤外画像から、田んぼの水温分布を測定し、適切に水温をコントロールして収穫量を上げるようにします。
(4)万華鏡のような偏光顕微鏡画像をシミュレーション
大学の1・2年次に実施される地球科学実験の授業では、偏光顕微鏡を用いた鉱物薄片の観察を行っています。偏光顕微鏡を用いて鉱物薄片を観察すると、万華鏡のように美しい色の変化(干渉色)が見られますが、これらの色の変化には理論的な裏付けがあります。しかしそれを理解するのは初学者には難しいので、より理解しやすくするために、光の3原色の原理を用いて干渉色をコンピュータでシミュレートし、あらかじめどのように変化するか頭に入れておいて実物を観察できるようなプログラム(アプリ)の開発を行います。
(5)花崗岩の中のガスからマグマの世界を知る
花崗岩の中には微量の気体炭素化合物(メタン・エタン・二酸化炭素・一酸化炭素など)が含まれています。これらのガスはマグマが冷却固結した時に鉱物結晶とともに閉じ込められたと考えられ、その組成は冷却固結時の温度・圧力・酸素分圧などよって変化します。そこで花崗岩を破砕して中のガスを分析し、そこに含まれる気体炭素化合物の組成から、冷却固結時の各種条件の推定を試みています。
所属・連絡先など
・複雑系科学専攻/自然情報学科複雑システム系
・e-mail: nagamine”at”nagoya-u.jp