ミニ特集:サイエンス・ウィズ・情報
「情報」という言葉は今やごく普通に使われる言葉になっており、情報テクノロジーは私たちの生活のすみずみに行きわたっています。買い物するにも友達と連絡するにも大学の授業を受けるにも、ネットやパソコンやスマホが使えないと、ひどく不便なことになっているのではないでしょうか。2000年頃はこんなにもネットに頼っていなかったと思います。しかし、コンピュータとネットの発達は、よいことであるし、従来からあったことをよりよくしていくことにも役立っています。コンピュータの発達は、科学の研究にも変化をもたらしています。昔ならできなかった研究が、情報テクノロジーの進歩のおかげでできるようになってきました。
このミニ特集では、コンピュータなどの情報テクノロジーを用いた新しい科学研究を情報学研究科の先生方に紹介してもらいます。情報学ならではの新しい科学、それを「サイエンス・ウィズ・情報」と称してみました。
化学の分野では膨大な種類の分子のデータが蓄積されており、こういう分子のことを知りたいと思っても、とても人手ではデータの山の中から見つけてこれなかったのが、コンピュータとネットのおかげで、どこにいても瞬時に検索できるようになりました。また、化学と言えば実験するのが当然だったのが、コンピュータのプログラムで化学実験と同じことを計算で予測できるようになってきました。吉田紀生先生には「分子と情報」というテーマで、コンピュータの力でできるようになった化学の新しい研究を紹介していただきます。
すべての生物の体はタンパク質という分子でできていますが、分子は人間の目では見えません。コンピュータのプログラム上でタンパク質分子の形や動きを「見る」ことが可能になってきました。小池亮太郎先生には「生物と情報」というテーマで最新の生物学研究を紹介していただきます。
コンピュータが将棋や碁を学習するという機械学習が近年さかんですが、コンピュータは「人間の学習」の助けにもなります。人間が数学の問題を解いて、コンピュータがそれを答え合わせして、間違いを見つけ、人間にアドバイスする eラーニングというシステムがあります。また、実験と言えば、人が実験室に行かないとできないというイメージがありますが、ネットとコンピュータを使って離れた場所に居ながら実験をするというオンライン物理学実験ができるようになりました。中村泰之先生には「人間と情報」というテーマで、人間の教育・学習のために情報テクノロジーを使った最近の事例を紹介していただきます。
編集:谷村省吾(複雑系科学専攻)