教員紹介:時田 恵一郎(ときた けいいちろう)
研究内容
個々のものは単純な働きしかしなくて単純な式で記述できるのに、数が増えるとその全体は非常に複雑な振る舞いをする、そういうものがこの世界にはたくさんあります。複雑系科学の創始者のひとりである,ノーベル物理学賞受賞者のP. W. アンダーソンは,「量は質を変える(”More is different”)」という複雑系の本質を見事に表現した有名な言葉を残しています.生態系、細胞内の代謝系、免疫系、生体高分子、神経回路網(ニューラルネットワークや深層学習など)、組み合わせ最適化問題、情報システム、経済システム、社会システムなどがその例です。それらの複雑系を、非線形力学、統計物理学、計算物理学などの手法を用いて数理的に理解し、制御するための方法を研究しています。これらは一見全く異なる研究分野の問題なのですが、比較的単純なものが多数集まり、複雑な相互作用で影響しあうことにより創発するマクロな現象という点で数理的に密接な関係があります。これらを統一的な視点で眺めることにより逆に個々の理解が深まるという場合が少なくありません。アリの研究や,社会生物学の創始者としても有名な,進化生物学者E. O. ウィルソンは,複雑系科学を通じた様々な分野の知の統合を「コンシリエンス」と呼んでいます.数学や物理の解析的なアプローチからスーパーコンピューターやGPUを用いた大規模シミュレーションまで、様々な手法を駆使して新しい研究領域を開拓しようとしています。
担当講義
- 物理学基礎1(古典力学)(全学,1年)
- 計算情報学1(微分方程式,応用数学)(情報学部・自然情報学科,2年)
- シミュレーションサイエンス1(情報学部,2年)
- 複雑システム系序論1,2(情報学部・自然情報学科,2年)
- 情報物理学特論(ニューラルネットワーク,機械学習,生物ネットワークの統計力学)(大学院情報学研究科・複雑系科学専攻)
講義等で紹介する著書,論文,解説記事
- 時田恵一郎,「蝶の羽ばたきは嵐を呼ぶか?:カオスは生命をかく語りき」,細胞工学,Vol.23,No.9,2004.
- 時田恵一郎,「多様性の進化と維持機構」,人工知能学会誌,Vol.19, No.6,2004.
- 時田恵一郎,「中立モデルとランダム群集モデル」,「複雑ネットワーク理論の基礎」,生物間ネットワークを紐解く,京都大学出版会,2009.
- 時田恵一郎,「スーパーコンピューティングコンテスト2011」,数学セミナー,No.605,2012.2.
所属学会
所属・連絡先
- 名古屋大学
- 大学院・情報学研究科・複雑系科学専攻
- 情報学部・自然情報学科・複雑システム系
- 多自由度システム情報論講座
- tokita@i.nagoya-u.ac.jp
- http://www.phys.cs.i.nagoya-u.ac.jp/~ktlab/
- 名古屋大学教員データベース