ミニ特集「身体の情報処理がこころをつくる」の趣旨と概要
心理学や認知科学では、人間を含む動物を一種の情報処理機構として捉え、そのメカニズムがどのようにこころや行動を創発するのかを理解しようとしてきました。そうした情報処理は脳によって担われていると考えられてきましたが、近年になり、身体の重要性が認識されるようになりました。脳は孤立して存在しているわけではなく、身体を介して世界と繋がっているからです。視覚、聴覚、体性感覚など、外の世界を知るための仕組みを外受容感覚と言います。また、自分が運動することによる身体の感覚や、空間の中での自分の身体の位置を知るための感覚を固有感覚と言います。さらに、内臓の運動や血液成分など自分の身体の内部を知るための仕組みを内受容感覚と言います。私たちの脳は、こうした身体からの多様な情報を処理し統合することによって、私たちのこころを形作っていることが、次第に明らかになりつつあります。
このミニ特集では、こうした問題に関する最新の研究知見を紹介するために、以下の記事が掲載されています。
- 意思決定を創発する脳と身体の情報処理
- 大平 英樹(心理・認知科学専攻)
- 社会的認知発達における身体の役割を探る:身体の外側と内側の視点から
- 平井 真洋(心理・認知科学専攻)
- 自己と他者のバウンダリーを規定する身体
- 磯村 朋子(心理・認知科学専攻)
心理学・認知科学の研究は、今まさに、面白くなってきています。本ミニ特集が、心理学・認知科学の研究にご興味をお持ちの方や、名古屋大学 情報学部・大学院情報学研究科への入学・進学を検討されている方の参考となれば幸いです。
編集:大平 英樹(心理・認知科学専攻)